AEGIS NOVA IP CONSULTING
COMPETITOR COVERAGE — QUANTIFIED EDITION (v2.2)
玄録 #021

競合カバレッジ定量化版(v2.2)
エクサ vs PFN vs Optim ― 実数で裏付ける技術領域

前回の競合比較で定性評価(◎○△×)に留めた技術領域カバレッジを、競合の特許本文を実際に取得して定量化した改訂版。Preferred Networks 369件、Optim 300件サンプルを技術領域に分類し、エクサウィザーズとの構成比を実数で比較する。定性評価がどこで裏付けられ、どこで補正されたかを明らかにする。

◆ 実データ取得:PFN 369件・Optim 300件サンプルを技術分類(エクサ196件と比較)
対象:エクサ/PFN/Optim 3社 改訂:v2.2(カバレッジ定量化) 2026年5月
CONTENTS
  1. エグゼクティブサマリー(定量化の成果)
  2. 定量化の方法 ― 競合特許の実取得
  3. 技術領域カバレッジの実数比較
  4. 定性評価はどこで裏付けられ、どこで補正されたか
  5. Aegis Nova View ― 定量化が変えた結論
01 / Executive Summary

エグゼクティブサマリー(定量化の成果)

前回の競合比較レポートでは、競合の技術領域を公開情報ベースの定性評価(◎○△×)で示すに留まった。本改訂版(v2.2)では、競合の特許本文を実際に取得して技術領域に分類し、構成比という実数で裏付けた。結果、定性評価の多くは正しかったが、いくつか重要な補正が必要だと判明した。

369
PFN 実取得・分類
300
Optim サンプル分類
29%
PFNのAI半導体比率(最大)
53.6%
エクサのML基盤比率(突出)

① エクサの「実装層特化」が実数で裏付けられた

エクサは機械学習・予測基盤が53.6%と突出し、AI半導体・材料・農業建設は0%。前回「運用・実装層に特化」という構造評価が、構成比で明確に裏付けられた。

② PFNの「AI半導体の優位」も実数で確定

PFNはAI半導体・計算基盤が29.0%で全社最大。前回の「半導体◎」評価は実数でも正しかった。一方、材料・科学計算は0.8%と件数では少数——深いが狭い領域で、件数評価では見えにくいことが分かった。

③ Optimの「農業・建設DX」は件数では少数という補正

Optimは画像認識31.3%・汎用45.7%が中心で、農業・建設DXは件数では2.0%。前回「農業・建設◎」としたが、これは事業上の主力であって特許件数比率の主力ではないという重要な補正。事業の重心と特許の重心が一致しない好例。

02 / Method

定量化の方法 ― 競合特許の実取得

前回はレート制限により競合の実データ取得を断念したが、今回は時間をかけて取得に成功した。手順は以下のとおり。

工程内容結果
PFN取得出願人名検索で全ページを取得(重複除去)369ユニーク公開
Optim取得母集団が大きいため先頭300件をサンプル取得300件サンプル(構成比推定用)
領域分類発明の名称・要旨のキーワードで9領域に自動分類各社の構成比を算出
エクサ照合前回取得の196件を同一領域定義で再集計3社横並び比較が可能に
定量化の限界(正直な明示)

英訳タイトルが汎用的("Information processing"等)なため、キーワード分類では一定数が「その他・汎用」に落ちる(Optimは45.7%)。これは分類の限界であり、実際にはML基盤や各業界応用が「その他」に含まれる。またOptimは300件サンプルであり全3,167件の網羅ではない。構成比の傾向は読めるが、絶対数の確定には全件取得と本文精読が必要。本改訂は「定性から定量への第一歩」であり、完全な定量化ではない点を明示する。

03 / Quantified

技術領域カバレッジの実数比較

3社の技術領域構成比を実データで並べる。これが本改訂版の核心であり、前回の◎○△×を数字に置き換えたものである。

3社の技術領域カバレッジ定量比較(構成比%・実データ) エクサ PFN Optim 機械学習・予測基盤 53.6 23.6 2.7 画像・映像認識 27.0 22.0 31.3 AI半導体・計算基盤 0 29.0 4.3 ロボティクス・制御 6.6 6.0 2.7 生成AI・LLM運用 3.1 1.4 1.3 医療・ヘルスケア 5.1 0 3.3 材料・科学計算・創薬 0 0.8 2.3 農業・建設・産業DX 0 0 2.0 セキュリティ・管理 0 0.3 4.3 ※ 構成比%。エクサのML基盤53.6%突出、PFNのAI半導体29%、Optimの画像認識31.3%が各社の重心。 エクサはAI半導体・材料・農業建設が0%=運用実装層への明確な特化。これが実数で見える差別化。
図1:3社の技術領域カバレッジ定量比較(実データ構成比)。前回の◎○△×を実数に置換。出典:公開特許データベース(エクサn=196・PFN n=369・Optim n=300サンプル, 2026年5月時点)
技術領域エクサ %PFN %Optim %読み取り
機械学習・予測基盤53.623.62.7エクサの土台。実装層特化の証拠
画像・映像認識27.022.031.33社共通の主戦場
AI半導体・計算基盤029.04.3PFN独壇場。エクサは不参入
ロボティクス・制御6.66.02.7エクサとPFNが拮抗
生成AI・LLM運用3.11.41.3全社萌芽。エクサが僅かに先行
医療・ヘルスケア5.103.3エクサが介護出自で保有
材料・科学計算・創薬00.82.3PFNは深いが件数は少数(狭く深い)
農業・建設・産業DX002.0Optim事業主力だが件数は少数
セキュリティ・管理00.34.3OptimのMobile Security反映
04 / Validation

定性評価はどこで裏付けられ、どこで補正されたか

本改訂の最大の価値は、前回の定性評価(◎○△×)が実データでどこまで正しかったかを検証できた点にある。3つのパターンに整理する。

✓ 裏付けられた評価

「PFNのAI半導体◎」(実数29.0%で最大)、「エクサの実装層特化」(ML基盤53.6%突出)、「3社の画像認識共通」(22〜31%)——これらは実数でも正しく、定性評価の妥当性が確認された。

△ 補正が必要だった評価

「Optimの農業・建設DX◎」は、事業の主力ではあるが特許件数比率では2.0%と少数だった。事業の重心(プレスリリースで目立つ領域)と特許の重心(件数が集まる領域)が一致しないことが判明。定性評価は事業イメージに引きずられやすい、という方法論上の教訓。

! 件数では見えない価値

PFNの材料・科学計算は0.8%と件数は少数だが、Matlantisという独自基盤を支える戦略的に重要な領域。件数比率だけでは「狭く深い」価値を見落とす。定量化は定性評価を補完するが、置き換えはしない——両者の併用が正しい。

05 / Aegis Nova View

Aegis Nova View ― 定量化が変えた結論

定量化によって、前回の結論は大筋で維持されつつ、解像度が一段上がった。エクサの白地戦略の妥当性は、実数でさらに強固に裏付けられた。

① 「攻める白地」の妥当性が数字で補強された

生成AI運用はエクサ3.1%・PFN1.4%・Optim1.3%と全社が薄い萌芽領域で、かつエクサが僅かに先行。前回「攻めるべき白地(最優先)」とした判断が、実数で裏付けられた。早期に厚く出願する戦略的価値が確認できる。

② エクサの「実装層特化」は弱みでなく明確な戦略

AI半導体・材料・農業建設が0%という事実は、意図的な選択と集中の結果。ML基盤53.6%という一点集中は、限られた資源を運用層に投下する戦略の証拠。「避ける領域」の判断(半導体・材料・農業建設に手を出さない)は、実数で見れば既に実践されている。

③ 定性と定量は併用すべき ― 方法論への教訓

Optimの農業DXのように、事業の重心と特許件数の重心はずれる。定量化は「件数の事実」を、定性評価は「戦略的重要性」を捉える。どちらか一方では誤る。v2.2の最大の学びは、両者を併記する分析設計の必要性である。

v2.2の到達点と次の課題

競合カバレッジの定量化により、IPランドスケープ手法は「定性評価+定量裏付け」の二層構造へ進化した。残る課題は、Optimの全件取得(今回は300件サンプル)と、各特許のクレーム精読による「狭く深い」価値の評価。件数比率では見えない戦略特許(PFNのMatlantis関連など)を個別に拾う精読フェーズを加えれば、定量と定性が完全に統合される。これがv2.3への発展方向である。

本レポートは2026年5月時点で公開特許データベースから取得した実データに基づく。PFNは369ユニーク公開、Optimは300件サンプル(全3,167件の一部)、エクサウィザーズは196公開。技術領域分類は発明の名称・要旨のキーワードによる自動分類であり、英訳タイトルの汎用性により一部が「その他・汎用」に分類される限界がある。構成比は傾向を示すものであり、絶対数の確定には全件取得とクレーム精読を要する。本稿は方法論の定量化検証を目的とし、特定の投資・法務・事業判断を推奨するものではない。データソースの提供者名・士業の肩書は対外資料には記載しない方針を維持する。

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