IPセラピー(IP Therapy、知財の戦略的整理)とは、保有する知財ポートフォリオを 体系的に見直し、経済価値を生まない特許等を計画的に放棄・売却・譲渡することで、ポートフォリオ全体の 効率を高めるプロセスを指します。健康診断と治療になぞらえた表現です。
なぜIPセラピーが必要なのか
多くの企業の知財ポートフォリオは、長年の出願活動の累積として、徐々に肥大化していきます。 その中には、当初の事業目的を失い、現在は経済価値を生んでいない特許(休眠特許)が相当数含まれています。
これら休眠特許の維持には、継続的な年金支払いと管理コストが発生します。IP-P&Lの観点では、 コスト層を膨らませる一方で、価値層への貢献はゼロに近い構造です。
IPセラピーの標準プロセス
標準的なIPセラピーは、以下のプロセスで実施されます。
- 診断:保有特許全件を、活用状況・経済価値・戦略的位置づけで分類
- 分類:「主力活用」「防衛維持」「休眠(処理候補)」「外部移管候補」等に整理
- 処理方針決定:各分類について、維持継続・放棄・売却・譲渡・ライセンスアウト などの処理方針を決定
- 実行計画:放棄スケジュール、売却交渉、譲渡先の選定などの実行計画を策定
- 実行と評価:計画に従って処理を実行し、コスト削減効果を測定
注意点
IPセラピーには、いくつかの重要な注意点があります。
第一に、将来オプション価値の見極め。現時点で使われていない特許でも、将来の事業転換時に 価値を発揮する可能性があります。短期的な視点で放棄判断を急ぐと、長期的な機会損失を生むリスクがあります。
第二に、競合への流出リスク。売却・譲渡する場合、第三者(特に競合関係にある企業)への 流出経路を確認する必要があります。
第三に、関連特許との連動。1件の特許が他の保有特許群と連動して防衛効果を生んでいる場合、 単独で放棄すると全体の防衛力が損なわれることがあります。