FRAND条件(Fair, Reasonable, and Non-Discriminatory)とは、標準必須特許(SEP)の 保有者が、当該特許のライセンスを供与する際に従うべき「公正・妥当・非差別的」な条件のことです。 業界標準化団体(ETSI、IEEE、ITU等)が、SEP保有者に課す合意義務として定着しています。
3つの構成要素
FRAND条件は、3つの要素から構成されます。
- 公正(Fair):交渉プロセスにおいて、SEP保有者がライセンシー候補に対して 公正に振る舞うこと。一方的な提示、不誠実な交渉、過度な威嚇等は禁止されます。
- 妥当(Reasonable):ライセンス料率および契約条件が、技術の経済的価値に 照らして妥当であること。過大な料率の要求は許されません。
- 非差別的(Non-Discriminatory):同じような状況にある他のライセンシーと比較して、 合理的な理由なく差別的な条件を課さないこと。
料率の算定論点
FRAND条件における「妥当な料率」の算定は、世界各国の裁判所・規制当局で議論が続いている論点です。 典型的な算定アプローチには以下があります。
- Top-down法:業界全体の合計FRAND料率の総額から、対象特許のシェアを算出
- Bottom-up法:個別ライセンス契約の事例から、対象特許の料率を直接導く
- 比較取引法:類似条件で締結された過去のFRANDライセンス契約を参照
主要なFRAND訴訟
2010年代以降、世界各国でFRAND条件をめぐる訴訟が多発しました。米国、欧州、中国、インド、英国などで、 SEP保有者と実施者(スマートフォンメーカー、自動車メーカー等)の間で、ライセンス料率および交渉プロセスの FRAND適合性が争われています。
日本でも、SEPに関連する訴訟および裁判所判断が積み重なっており、FRAND条件の実務的判断基準が形成されつつ あります。
FRAND遵守の実務的論点
SEP保有者にとって、FRAND遵守は単に法的義務であるだけでなく、業界エコシステムにおける信頼を維持するための 基盤です。FRAND違反と判断されると、独占禁止法上の制裁、差止請求の制限、ライセンス契約の無効化など、 重大な制裁が課される可能性があります。
実施者側にとっても、誠実な交渉プロセスを尽くすこと(「Willing Licensee」としての行動)が、FRAND保護を 受けるための前提となります。