標準必須特許(SEP、Standard Essential Patent)とは、業界標準の技術仕様を実装するために、 実質的に回避不可能な特許のことです。5G通信、Wi-Fi、Bluetooth、4K/8K映像、AVCコーデック等の業界標準を 実装する製品は、関連するSEPのライセンスを取得しなければ製造・販売できません。
SEPの戦略的価値
SEPは、通常の特許とは異なる経済的価値を持ちます。
- 業界標準が広く採用されれば、SEP保有者は標準に従う全企業からライセンス収入を得られる
- 競合企業が標準に従わない選択をすると、市場参入が不可能になるため、SEPの交渉力は極めて高い
- ライセンス収入だけで、グローバルメガファームと並ぶ規模の利益を生み出すことが可能
FRAND条件との関係
SEPの強大な交渉力は、独占禁止法上の論点を生みます。これを調整するため、業界標準化団体は、SEP保有者に 対してFRAND条件(Fair, Reasonable, and Non-Discriminatory:公正・妥当・非差別的)での ライセンス供与義務を課すことが一般的です。
FRAND義務の下では、SEP保有者は標準を実施する全ての企業に対して、合理的な条件で、差別なく、ライセンスを 供与する必要があります。これにより、SEPの交渉力に一定の制限が加えられます。
SEP関連訴訟の特殊性
SEPに関連する特許訴訟は、通常の特許訴訟とは異なる特殊な論点を含みます。「ライセンス料率がFRAND条件に 該当するか」「保有者が誠実な交渉を尽くしたか」「実施者が誠実なライセンシーであったか」などが争点と なります。
SEP化の戦略
企業の知財戦略において、自社の重要特許を業界標準に組み込ませ、SEP化することは、ライセンス収入と 交渉力を最大化する強力な戦略です。これには、標準化団体への積極的な関与、技術提案の継続的な提出、 他社特許との競争などが必要となります。